
コンクリートスラブ上部のファサード固定に新たな『EDGE』を活用

ヒルティの鉄筋端部拘束用プレートを使用した先付けアンカーチャネル(HAC EDGE)は、せん断力作用時に優れたコンクリート端部の『耐』破壊性能を発揮するカーテンウォール用途の新しいソリューションです。
先付けアンカーチャネル概要
図1に先付けアンカーチャネルの概要を示します。
標準的な先付けアンカーチャネル(HAC)は、頭付きスタッドがついたチャネル材と T ボルトで構成されている部材で、チャネルのレール上で柔軟に位置調整ができ、コンクリートを打設する前に設置するため、現場で、あと施工アンカー工事としての穿孔が不要となり、迅速に施工を行うことが可能になります。カーテンウォール取付けから、データセンターなど様々な用途の機器設置、エレベーター工事などで使用されています。先付けアンカーチャネルシステムは、溶接が不要で、有資格者や熟練工でなくても施工が可能となるため、さらなるコスト削減を実現します。さらに、1箇所あたりの施工時間を短縮するだけではなく、配置ミスの可能性を減らし、作業者の安全性を向上させ、接合部の構造的な信頼性を高めることができます。
図1 先付けアンカーチャネル(HAC)概要
先付けアンカーチャネルのコンクリート端部破壊の検証は、1本のアンカーの基準コンクリート破壊強度に、アンカーピッチ、部材厚、隅角部の影響、コンクリート部材のひび割れ発生・配筋状況、などの修正係数を見込んで行います。
標準的な先付けアンカーチャネルの場合、図2に示すように固定部分に作用するせん断荷重は、
- T ボルトからアンカーチャネルとスタッド(アンカー)を介してコンクリートに伝達されます。(①)
- チャネル材の前方でコンクリート端部破壊が発生します。(②)
- 限界せん断荷重に達すると、チャネル材の前方のコンクリートは構造体から完全に分離します。チャネルの変形が大きくなるにつれて、せん断荷重は減少します。(③)

図2 せん断荷重が作用したアンカーチャネルの挙動(左)せん断荷重 - 変位曲線(右)
コンクリートスラブ上部への設置における弱点とは
先付けアンカーチャネルの設計では、引張、せん断、および、引張とせん断の組合せに対する鋼材とコンクリートの破壊モードを検証する必要があります。アンカーチャネルの強さは、その最も弱い部分で決まり、カーテンウォールの場合、せん断が作用した場合の弱点は、一般的にコンクリート端部破壊になります。この破壊モードは、コンクリートの各部寸法や材料特性によって決まります。
カーテンウォールへの適用では、アンカーチャネルは、建物の最終段階の設計の1つであり、よく留付け設計は、後付けの結果になります。つまり、アンカーチャネルのサイズを決めるときには、アンカーチャネルの性能に大きく影響する様々な要素の変更は困難になっているのです。スタッド(アンカー)中心からコンクリート端部までの距離は、コンクリート端部破壊に大きな影響を与える変数ですが、この距離が既に決められ、設計者に最小限の選択肢しか残っていないかもしれません。ブラケットの大きさから、スタッド(アンカー)中心からコンクリート端部までの距離は、一般的に非常に狭い帯域でのみ変動可能になります。
HAC EDGE
ヒルティは、カーテンウォール市場のニーズを踏まえ、鉄筋コンクリート構造の基本原理を利用して、新しいアンカーチャネルシステムを開発しました。
図3 HAC EDGE 概要と部材
HAC EDGE は、ヒルティアンカーチャネル(HAC)と非構造的に取付けた鉄筋端部拘束プレート(EDGE プレート)で構成され(図3)、設置の許容範囲、大きい風荷重、薄いコンクリート部材、狭い端部のへりあき距離、軽量コンクリートなど、今日のファストトラック方式の要求やカーテンウォール業界の要件を満たすバリューイノベーション(価値革新)をもたらす新しい留付けシステムです。「コンクリート端部破壊」モードに対して、相対的に低いコンクリート引張耐力ではなく、小さい端部へりあき距離、薄いコンクリート部材、低いコンクリート圧縮強度、軽量コンクリートの荷重伝達を最適化し、優れたコンクリート端部性能を発揮します。また、HAC EDGE は、従来のコンクリートへのアンカーの概念を変えます。コンクリートの低い引張強度に依存せず、アンカーチャネルに取付けた鉄筋の引張強度を利用し、チャネル材から鉄筋へのせん断荷重伝達を最適化しています。
先付けアンカーチャネルシステム
図4は、せん断荷重作用時の HAC EDGE の挙動(左)とせん断荷重-変位曲線(右)を示しています。
HAC EDGE の最初の荷重段階は、標準アンカーチャネル、鉄筋を溶接したアンカーチャネルと同等です(①)。せん断荷重が作用すると、まずチャネル形状からコンクリートの自由端部に向かって荷重が伝達されます。溶接された鉄筋によって支えられた EDGE プレートが端部を拘束し、圧縮ストラットを形成します(②)。そのため、せん断荷重は鉄筋に伝達され、鉄筋が完全に機能するとシステムは限界耐力に達します(③)。
EDGE プレートはアンカーチャネルに構造的に接合していないため、せん断と引張の荷重伝達メカニズムを切り離すことができます。コンクリート端部へりあき距離が小さい場合、HAC EDGE は、コンクリートスラブ上部に設置した従来のアンカーチャネル(チャネル材に鉄筋を溶接)の2倍以上の耐力で、補強筋無しの標準アンカーチャネルの5倍までの性能を発揮します。
図4 せん断荷重時の HAC EDGE の挙動(左)せん断荷重 - 変位曲線(右)
HAC EDGE の付加価値
HAC EDGE は、コンクリート端部破壊に対する高いせん断耐力に加えて、コンクリート端部へりあき距離を指定することで施工ミスを減らし、より安全で迅速な設置が可能です。また、せん断力作用時の端部破壊強度に最も大きな影響を与える変数であるコンクリート端部へりあき距離をより適正に確保します。さらに、EDGE プレートにより、釘やねじなどで型枠に簡単に固定できるため、アンカーチャネルの設置作業を簡素化します。HAC EDGE は、より小さいファサードブラケットを使用できるため、全体的な材料のコスト減に繋がります。コンクリート端部へりあき距離が小さくても優れたコンクリートせん断性能を発揮するため、建物の端部から少なくとも 4"~5"(約100~125mm)離れた位置に設計が可能で、これによりブラケットが内装壁に納まり実質的なコスト削減が可能になります。
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