建設における腐蝕
現場での腐蝕を考慮することはなぜ重要なのでしょうか?
世界の鋼材年間生産量のおよそ 5分の1は、防蝕によって損傷を受けたものの交換に使用されていると言われています。 これはかなりの経済的損失に相当しますが、さらに大きな懸念は安全性のリスクであり、腐蝕により留付けシステムの不具合につながる場合があることです。
防蝕はこれらのリスクを軽減する最適な方法です。 積極的な防蝕には、例えば、ガルバニック絶縁、耐蝕性素材、陰極防蝕法などの鋼材とその腐蝕環境との反応に直接影響を与える対策が含まれます。 受動的な防蝕では、金属または非金属製の保護コーティングを塗布することにより、腐蝕剤から金属素材を絶縁して腐蝕を遅らせます。
なぜ腐蝕が関係するのでしょうか?
アメリカメッキ協会の推定によると、ゴールデンゲートブリッジに完全な溶融亜鉛メッキを施していた場合、建設コストは約 15% 増加していたものの、その橋の開通以来のメンテナンスおよび修繕コストを10 憶ドル節約できていたということです。
これは極端な例ですが、初めから有効な防蝕に投資すると長期的には支出に見合った収益が確保できます。
腐蝕を防ぐためには、将来の点検やメンテナンスをかける代わりに、設計段階で適切な耐食性を組み込むことが可能です。 有効ではない防蝕は構造の寿命を縮めるのみではなく、最悪の場合、費用が高く付く再作業や不具合に至ることがあります。
腐蝕とは何でしょうか?
腐蝕とは金属とその周囲の環境との間の物理化学的相互作用であり、その結果として金属の特性に変化をもたらし、金属、環境あるいはそれらが構成するシステムに重大な機能不全をもたらすことがあります(参照 ISO 8044:2010)。
炭素鋼、ステンレス、亜鉛、銅およびアルミニウムなど、工業で一般的に使用される金属において、通常の腐蝕は時間をかけてより安定な(製造前の)状態へと変質することです。
影響を与える要因
腐蝕リスクを評価するには、環境条件、素材の特性、素材の組み合わせおよび設計の特徴の相互作用を精査することが必須です。
以下に示すのは、検討すべき最も一般的な影響要因です(特定のアプリケーションおよび環境に関連した数多くのその他の要因があることにご注意ください)。
- 電解質: あらゆる大気腐蝕反応の要件(例えば、湿度、水分など)
- 温度: 温度が高いほど腐蝕速度は速くなります。
- 化学物質: 海上の空気に含まれたり、冬季の凍結防止に使用される塩分やスイミングプールの塩素などは、腐蝕を加速します。
- 工業汚染: 二酸化硫黄とその他の汚染物質は腐蝕を加速します。
- 異種金属: 異種金属間の直接接触(一方の金属が他方よりも貴ではない場合)は腐蝕リスクを高めます。
腐蝕の種類
電気化学的反応
最も一般的な腐蝕反応は自然における電気化学です。このような反応は金属中の電子と水などの導電性電解質中のイオンとの間の電荷の交換を示します。
この種類の腐蝕の例:
- 均一腐蝕
- すきま腐蝕
- 孔蝕
- 電解腐蝕
機械的応力の組み合わされた影響
この種類の腐蝕は、特定の金属の割れにつながる機械的および電気化学的腐蝕プロセスが組み合わさったものです。素材の内部応力が、浸食を開始するのに十分な場合があります。
これは高強度または焼き入れした炭素鋼が応力下で脆くなり、突然不具合を起こすプロセスです。
お客様のアプリケーションに応じて、この形態の腐蝕を引き起こさない様、特定の素材の使用を制限します。
この種類の腐蝕の例:
- 応力腐蝕割れ (SCC)
- 水素助長割れ (または第二水素脆化)
環境カテゴリ
建設における腐蝕はコストおよび安全性に大きな影響を与え、特別なアプリケーションでは腐蝕リスクを軽減するために、特別な注意が求められます。 環境カテゴリは検討すべき重要事項です。 先に説明した一般的な影響要因を考慮して、
これらは環境の一般的な腐蝕性によって分類されます。
屋内アプリケーション
- 結露のない乾燥した屋内環境
(空調のある場所)、例:オフィスビル、学校 - 一時的な結露のある屋内環境
(汚染物質のない空調のない場所) 例:貯蔵庫
屋外アプリケーション
- 汚染度の低い田園部または都市部の屋外。
海からの距離が遠い (> 10 km) - 汚染物質や海水からの塩分が低濃度の田園部または都市部の屋外環境。
海からの距離が 1~10 km の沿岸地域。 - 沿岸地域。
海からの距離が 1 km 未満 - 重度の工業汚染があるエリアの屋外。
年間平均の大気中 SO2 濃度 > 10 μg/m3 (例えば、汚染物質を排出する工場の近く) - 凍結防止用の塩で処理された道路の近傍。
道路からの距離 10 m 未満
特別なアプリケーション
例えば、凍結防止の塩で処理された道路のトンネル、屋内水泳プール、化学工業の特別なアプリケーションなど、特別な腐蝕性条件のあるエリア(例外はあります)。
どのようにして腐蝕を防ぐことができますか?
腐蝕を防ぐことはできません。 その代わり、腐蝕の目的は、製品または集合体の期待されるサービス寿命の間、構造上の完全性(および一部のケースでは外観)を維持することです。 受動的な保護には、環境条件に適した素材や保護コーティングを選択することが含まれます。
適切な防蝕を選択します
アンカー、火薬式ファスナーおよびねじ
全サービス寿命にわたり、ファスナーの性能と信頼性を高めるには、適切なファスナーを選択する前に、すべての影響要因を特定する必要があります。
表(5 ページ)のリンクをクリックすると、留付け要素に関する一般的なアプリケーション向けの一般的なガイドラインが表示されます。
表(英語版)はこちら木材用鋲
木材は有機酸を含み、化学物質(例えば、防腐剤や防火剤)が添加されているので耐蝕性があります。 木材用鋲の防蝕の種類を選択する際には、大気条件に加えて木材自体からの浸食を検討する必要があります。
表(6 ページ)のリンクをクリックすると、木材用鋲が使用される一般的なアプリケーション向けの一般的なガイドラインが表示されます。
表(英語版)はこちらモジュラーサポートシステム
初期被覆の一般的な定格寿命は大気の腐蝕性に依存し、世界中の場所によって大きく異なります。 実用的なアプローチとして、ヒルティではゾーン間で区別しています。
表(7 ページ)のリンクをクリックすると、ヒルティインスタレーションシステム(例えば、チャネルシステムと配管留付け)の一般的な製品寿命に関するガイドラインが表示されます。
表(英語版)はこちらなぜ防蝕にヒルティが選ばれるのでしょうか?
試験の実施
ヒルティでは製品の防蝕を調査するために、実験室および現場での総合的な腐蝕試験を実施しています。 ヒルティは幅広い環境条件に対して適切な防蝕を備えた適切なソリューションを提供しています。 お客様がどの様な状況におかれていても、お客様が必要とする耐蝕性能が何であれ、ヒルティにはソリューションがあります。
共同作業
設計から設置まで
ヒルティグループは世界中の 120 以上の国に 28,000 名を超える従業員を擁しています。 高度な訓練を受けたアカウントマネージャ、フィールドエンジニアのローカルチームとオフィスに常駐するチームは、設計、ロジスティクス、施工のすべての局面でお客さまをサポートします。 ヒルティはお客様の現場を訪れ、電話やメールでも対応し、お客様が必要とするどこででも、いつでも対応いたします。
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腐蝕環境での鋼材への留付け
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